日米安全保障条約は、北朝鮮問題と尖閣諸島問題で日本にとって本当に有効か?

国連決議のNPT(核兵器不拡散に関する条約)に違反して繰り返される北朝鮮による核実験や弾道ミサイルの発射実験に対して、国際的に非難の声が高まる中、北朝鮮には一向に態度を改める気配は見えない。それどころか、アメリカと韓国の合同軍事演習が実施される度に、かえって実験の規模がエスカレートされるように思える。日本政府は、北朝鮮の度重なる弾道ミサイルの発射実験に非難声明を行っているが、北朝鮮に対しては何の効果もない。日本政府は、尖閣諸島を2012年9月に日本政府の所有にして以来、頻繁に繰り返される中国海洋局の巡視船や中国漁船の領海侵入や北朝鮮による繰り返し行われる弾道ミサイルの発射実験に対応するため、軍事費の大幅な増額と敵基地攻撃能力を備えた防衛力の強化を行う方針を示し、本来の憲法9条に基づいた自衛隊の役割を専守防衛から垂直離陸戦闘機F35Bや対潜水艦ヘリコプターSH60を搭載可能な空母兼護衛艦などを複数所有し、機動能力と敵基地攻撃能力を備えた軍隊として、アメリカ軍の戦力の一部に加えようとしている。日本政府は、日米安全保障条約の有効性を説明する際、日米安全保障条約によって北朝鮮や中国から日本が守られているという話をよく用いるが、1950年6月25日に勃発した朝鮮戦争で北朝鮮・中国と戦ったのは、韓国とアメリカであり日本ではない。そして、1953年7月27日南北休戦調停の調印が行われ、一時的に38度線を休戦ラインとして北朝鮮と韓国という南北分断国家が生まれた。この38度線はこの2つの国を分ける確定した国境ではなく、あくまでも一時的な休戦ラインであり、いつ戦争が起こってもおかしくない状態がアメリカ・韓国と北朝鮮の間で今尚続いているのである。北朝鮮と戦争をしているのは、アメリカと韓国であり、日本は正確に言うと北朝鮮の敵ではない。つまり、北朝鮮の弾道ミサイルの標的は、日本にあるアメリカ軍基地であるが、本来専守防衛に徹した自衛隊基地ではない。そのことを考えると日本にアメリカの基地があることで、万が一北朝鮮・中国がアメリカ・韓国との間で調印した休戦協定を破棄して戦争状態に戻った時にアメリカ軍基地を狙った弾道ミサイルが目標を誤って日本の民間施設に甚大な被害をもたらす危険があることを忘れてはいかない。現在の自衛隊の防衛システムは、海上自衛隊のイージス艦や航空自衛隊の対潜水艦哨戒機P-3Cなどアメリカ軍の防衛システムを採用しており、アメリカ軍と自衛隊の合同訓練が毎年実施され自衛隊がアメリカ軍の戦力の一部に組み込まれようとしている。台湾と中国の間では、近年になく軍事的緊張状態が続いている。また、尖閣諸島の領有権をめぐり中国と日本の間においても緊張状態が発生している。そして、北朝鮮が繰り返す弾道ミサイルの発射実験が日本を含む極東アジア地域にこれまでにない軍事的緊張状態を生じさせている。一時的な休戦調停が破られ再び北朝鮮・中国と韓国・アメリカとの間で朝鮮戦争が勃発する危険は年々高まってきている。もし再び朝鮮半島で有事が起こった際、日米安全保障条約があることで、かえって日本を新たな朝鮮戦争に巻き込む原因になる危険性を孕んでいることを忘れてはいけない。戦後の77年間を振り返ると日米安全保障条約の下で日本は、確かに高度経済成長を経てGDPで世界2位の経済大国として大きく成長し、日本の国益にとって有益であった。しかし、現在の世界情勢は、日米安全保障条約を結んだ77年前の世界情勢とは、大きく様変わりし中国は軍事面においても、経済面においてもアメリカを脅かす存在になっている。2030年には、中国はGDPでアメリカを追い越すことが予測され、また、次世代通信技術の5Gの世界標準の覇権争いでは、中国がアメリカを大きくリードしている。この次世代通信技術5Gは、自動運転技術やIoTの最先端技術やAIにも関係するため5Gの世界標準を獲得した国がこれからの世界経済を主導すると言われている。そのためアメリカは、5Gの覇権争いに勝つためにアメリカを中心にした市場から中国を排除しようと懸命になってデカップリング政策を進め、同盟国にも中国企業との取引を禁止するよう強く求めている。このアメリカのデカップリング政策は、アメリカを中心とする市場と中国を中心にする市場の経済圏の分断化を招き、新たな冷戦を産む危険性を孕んでいる。このような世界情勢を考えた時、日米安全保障条約がこれからの日本にとって本当に有益であるのかを、日本の国益の観点から考えなければならない。そして、近い将来起こるであろう中国とアメリカの戦争に、日米安全保障条約があることで日本が巻き込まれる危険性があることも事実である。そして、その危険性は年々高まって来ていることに十分に注意しなければならない。

Posted by たっちん