来年度から5年以内に防衛費をGDPの2%以上に増額することを公約として掲げた自民党
ロシアによるウクライナ侵攻や北朝鮮による度重なるミサイル発射実験と台湾と中国の間で続く軍事的緊張状態を理由に自民党は、今年の参議院選挙の公約として来年度から5年以内に防衛費を現在のGDP比1%(5.4兆円)からGDP比2%(11.8兆円)に増額することを選挙公約として掲げました。また、政府も今年6月に閣議決定した「骨太の方針」で防衛力について「5年以内に抜本的に強化する」と位置づけ、北大西洋条約機構(NATO)が防衛費のGDP比2%以上を目標にしていることに言及して、防衛力の強化と防衛費の大幅な増額方針を公に示しました。政府と自民党は、現在の防衛費の2倍にあたるGDP比2%(11.8兆円)の防衛費に増額するための財源を示すことなく、防衛費の増額する金額を北大西洋条約機構(NATO)が防衛費のGDP比2%以上を目標にしていることを理由に挙げて、年末にかけて安全保障政策の重要な指針である「戦略3文書」の改定を行おうとしている。政府は安全保障政策の中で敵基地攻撃能力の保有について最近積極的な議論を交わしている。2004年度に初めてミサイル防衛(BMD)のための予算が防衛費に計上されてから、海上自衛隊のイージス艦を配備して敵の弾道ミサイルを大気圏外で迎撃ミサイルSM3で破壊し、万一撃ち漏らした場合は、陸上自衛隊に配備された地対空誘導弾パトリオット3(PAC3)が大気圏内で迎撃するというミサイル防衛システムの導入によって、政府のこれまでの説明では、北朝鮮のミサイルに対しても防衛手段として万全なはずであった。そして、2004年から2017年までと2018年度の予算の累計でミサイル防衛(BMD)システムの整備のために2兆588億円もの膨大な国民の血税が使われて来たのだが、最近北朝鮮が繰り返し行っている機動力のある弾道ミサイルの発射実験に対して、日本のミサイル防衛(BMD)システムでは、北朝鮮の弾道ミサイルを迎撃することが難しいことがわかると、今年に入って政府と自民党は敵基地攻撃能力を保有することについて議論を開始した。政府と自民党による財源なき防衛費のGDP比2%(11.8兆円)への大幅な増額は、増税という形で必ず国民に跳ね返ってくる。防衛費をGDP比(2%)にするためには、5.4兆円の増税が必要になる。消費税を2%上げることにより5.4兆円の増収が見込まれると言われている。また、法人税を現在の29.74%から37.4%に8%上げることで5.4兆円の税収が見込めるとも言われている。政府と自民党は、今まで国民の莫大な税金を使って整備して来たミサイル防衛(BMD)システムが結局役に立たなかったことに対して、なぜこのような事態になったのかを説明する責任があるはずだ。なぜならば、初めて政府がこのミサイル防衛(BMD)システムを防衛予算に入れる時に、ミサイル防衛システムが日本に飛んでくる弾道ミサイルを十分防ぐだけの防衛能力を備えているのかという基本的議論についても、国会において十分議論されたはずだからである。それにも関わらずミサイル防衛システムが導入されてわずか18年足らずで役に立たないという結論に達したことは、あまりにも政府と自民党の議論が稚拙すぎるのではないか。アメリカ政府から言われたからミサイル防衛システムを導入したとは、信じたくはないが、2018年までに少なくて2兆588億円もの国民の大切な税金が使われ、結局役に立たないことが分かったのである。今年に入って政府と自民党は、目の色を変えて敵基地攻撃能力を保有することを真剣に議論し始めているが、北朝鮮や中国を念頭に仮に敵基地攻撃能力を保有したとして、国民の生命と財産を守るために本当に有効な防衛手段となりえるのか国会において真剣な議論をして頂きたい。北朝鮮は、日本にある米軍基地を標的にした中距離弾道弾ミサイルを数百発保有していると言われている。長距離弾道ミサイルと違い、日本のアメリカ軍基地を標的にした中距離弾道ミサイルは、軍用車両に乗せられて移動できるため発射場所の特定が困難であると言われている。その他にも移動する貨物列車に搭載した中距離弾道ミサイルの発射実験や潜水艦からも弾道ミサイルの発射実験を行っている。また、ミサイル実験と実際のミサイル攻撃をどのように見分けるのか。もし仮に日本が敵基地を先制攻撃して、相手国がミサイル実験だったと言った場合、日本が戦争を仕掛けたこことにならないか。政府も自民党もミサイル防衛システムの導入が失敗に終わったことに対して、深い反省と国民に対してなぜ失敗したのかを説明をしなければならない。防衛費をGDP比2%(11.8兆円)に増額するという議論を始めるのは、やるべきことをやって国民の理解を得た後で行うのが筋ではないだろうか。また、日本の防衛の基本は、憲法9条に基づいた専守防衛が大前提である。敵基地先制能力を保有することは、憲法9条に反することは言うまでもない。にもかかわらず、憲法を拡大解釈して合憲であるとする政府および自民党の考え方は、法治国家として認められるべきことではないはずだ。政府および自民党は、防衛費をGDP比2%に増額することを財源の議論もなく、予算額ありきで国会における数の力で強引に推し進めようとしているが、国民の大切な血税2兆588億円を使って導入したミサイル防衛システムが、結局無駄になってしまったことに対しての深い反省と、2度と同じような失敗を繰り返さないために野党の意見も十分聞いて、しっかりと議論をして国民が納得する防衛政策を策定して頂きたい。