日米安全保障条約を中心にした日本の安全保障政策のメリットとデメリットについて

2022年9月24日

【メリット】アメリカの核の傘の下で、他国の侵略から日本を守ることが出来る。

【デメリット】

1)米軍基地の固定化により、基地周辺の住民負担が大きいこと。(特に米軍基地の70%が集中している沖縄県民の負担が大きく、戦後77年の長期にわたり沖縄県民に過度な犠牲を強いている状態が恒常化している。) 2)日米安全保障条約が足枷になり、日本独自の外交が出来ない。(世界で唯一の被爆国である日本は、先頭に立って核廃絶運動を進めるべきであるが、日米安全保障条約があるため核禁止条約のオブザーバー国にもばれないのが現状である。また、イラク戦争の時、アメリカが国連安保理の承認決議を得ないまま、当時国際原子力機関の査察を受け入れて査察中だったイラクに【大量破壊兵器(核兵器)】があるという嘘の情報を理由にアメリカ、イギリスを中心にした有志連合をつくり、国連総会で国連加盟国の大多数の国々から反対をされているアメリカに対して、日本政府は一早く支持表明を行いました。ドイツ、フランスなどのヨーロッパ諸国が反対する中、アメリカは有志連合と一緒になってイラクに戦争を仕掛け、圧倒的な軍事力でイラクを破壊して、フセイン政権を倒し、アメリカ寄りの政権を作りましたが、イラク国内では内戦が続き、政情が安定せず国の復興が一向に進まず、IS等の武力勢力が生まれる温床が生まれました。イラク国内の政治的混乱が近隣の中東諸国に広がり、シリア内戦などが起こり大量の難民が発生して、今なお続くシリア内戦は、解決の糸口を見つけ出せずにいます。一方今年2月に始まったロシアによるウクライナへの軍事進攻では、ロシアが国連安保理の承認を得ないでウクライナに軍事進攻したことに、日本政府はアメリカに同調してロシアの武力侵攻を強く非難しています。そして、アメリカを中心にした同盟国と協調して、ロシアに対する経済制裁を行っています。日本政府のイラク戦争の時の態度と今回のロシアによるウクライナへの軍事進攻に対する態度には、一貫性がなく国連の安保理決議の承認がなくてもアメリカの戦争には賛成するが、アメリカが反対するロシアのウクライナに対する戦争には、反対するという大きな矛盾が見て取れるのは、やはり日本政府の外交政策が日米安全保障条約を中心にしているため、本来日本の国益を第一に考えて行うべき外交が、常にアメリカの国益を第一に考えて行うため、このような国家として一貫性のない、アメリカに追従した政策しか行えない国に見えるのではないだろうか。 日本はアメリカが敵対するイラン政府との独自のパイプを持っており、その他にも中国との関係でも長い歴史の中で育まれて来た政治的にも経済的にも深いつながりを持っている。この日本独自の強みを活かした外交を積極的に行うことで、東アジア地域や中東の軍事的緊張を解消することに大きく貢献できるのではないだろうか。そして、日本政府が独自の外交政策をおこなうことで、わが国に対する信頼を高めることになり、国際社会の中での日本の評価も高くなるのではないだろうか。戦後77年が経過し、日本中が焼け野原の状態で、アメリカ、中国を中心にした連合国のポツダム宣言を受け入れて、戦争に負けた1945年8月15日の時の世界情勢は、戦後の米ソ冷戦を経て大きく変容した。ソ連は崩壊してベルリンの壁は、壊され東西ドイツは統一して、旧東側諸国は、その多くがEU加盟国になっている。日本もそろそろ政治的に自立した国になる時が来たのではないだろうか?そのためには、日米安全保障条約の見直しも含めて真剣に議論すべき時が来ているのは確かである。 3)アメリカと中国の経済戦争により、中国に進出している日本企業が、中国からの撤退を余儀なくされ、経済的な損失が大きい。 4)自衛隊の役割が専守防衛から敵基地攻撃能力を備えた軍隊として、アメリカ軍の戦力の一部に組み入れる動きがあり、有事の際にアメリカの指揮命令系統に入ってアメリカの戦争に積極的に参戦させられる危険がある。海上自衛隊のイージス艦や航空自衛隊の対潜水艦哨戒機P-3Cの防衛システムは、アメリカの防衛システムを採用しているため、既に自衛隊の防衛システムはアメリカ軍の防衛システムに組み込まれている。もしアメリカが第3国との間で戦闘状態になった場合、自衛隊だけをアメリカ軍と切り離すことは、今後、より難しくなるのではないだろうか。 5)次世代の通信技術5Gの世界標準を巡ってアメリカと中国は、激しい覇権争いを行っている。この最先端技術は、自動車の自動運転技術やAIやIoTの最先端技術にも関係するため、5Gの世界標準を握った国が世界経済を主導すると言われ、現在中国はアメリカに5Gの開発と市場導入で大きく先行している。そのため、アメリカは、何とか5Gの覇権を手中に収めるため同盟国と協調して、デカップリング政策により、中国を市場から排除しようと躍起になっている。アメリカのデカップリング政策によりアメリカを中心にした市場と中国を中心にした市場に世界経済が大きく2つに分断されようとしている。2030年には、GDPで中国はアメリカを追い抜くことが予想されている。台湾を巡りアメリカは、従来の【One China Policy】から台湾の国連機関への加盟を支持するなど台湾政策を大きく変えようとしているように見える。また、台湾に最新の軍事装備品を売り、中国と台湾の緊張を煽っているようにも感じられる。ロシアがウクライナに軍事進攻をしたように、中国も台湾に軍事進攻をするのではないかとアメリカを中心にした同盟国の間で盛んに議論になっているが、台湾が中国の一部であることは、世界中の国々の共通認識である。中国にとってアメリカとの間でしのぎを削る次世代通信技術5Gの覇権を取ることの方が最重要課題であるはずである。なぜならば、5Gの世界標準を制した者が世界経済を主導することになるからだ。人類が繰り返して来た覇権の歴史を見るとわかるように、人類は覇権を巡って数々の争いを起こして来た。現在、中国と台湾の間で政治的な思惑で緊張状態が作られているが、この緊張状態の影には、アメリカと中国の覇権争いが見え隠れする。超大国アメリカと中国の戦争は、台湾ではなく経済の覇権争いが直接の原因になることは火を見るより明らかだ。もし、アメリカと中国の間で戦争になった場合、日本はどうすべきかを真剣に議論すべき時がきているのではないだろうか。日米安全保障条約に基づいて、アメリカと一緒になって中国と戦争をするのか、スイスやオーストリアのように永世中立国になって、アメリカと中国の戦争には、加担しない道を選ぶのか、選択を間違えば日本は再び長崎、広島に原爆を落とされ、日本中が焦土となった悲惨な歴史を繰り返すことになる。中国がアメリカをGDPで追い越すと言われている2030年は、もう直ぐそこまで来ている。

Posted by たっちん